施設長のひとりごと
富士子ロス
2024-06-28
富士子さんという利用者がおられます。富士子さんは以前もブログでご紹介した、パーキンソンの進行が見られる方です。
富士子さんは、話しかけられてれていることも、今から何をしようと声をかけられている事も、分かってはおられます。ただ、それに対する返事や反応が上手くいかないのです。感情表現が上手くいかず、よく大きな声でわんわん泣かれています。そんな富士子さんだから、周りのおばあちゃまたちは、いつも富士子さんに「富士子ちゃん!!泣かないでいいよ」「富士子ちゃん、頑張ってね」「富士子ちゃん、私たちがおるよ」こんな風に、富士子さんより遥かにお年が上のおばぁちゃま達が、なにかと声をかけお世話を焼いてくれていました。それは、もう、役割であるかのような毎日の光景です。
そんなある日、富士子さんが体調を崩し、入院されてしまいました。ぽつんと空いた富士子さんの席に、
なんだか寂しさが漂っています。そして、日を追う事に気づいたことがあります。同じテーブルのおばあちゃま達が「富士子ロス」になっているではありませんか!!(;゚Д゚) 「富士子ちゃん、どこに行ったの?」「富士子ちゃん、まだ戻ってこないの?」と
いなくなった富士子ちゃんを気遣う声が、いつも聞こえてきます(*^_^*)
空いたお席は、そのままにしています。時々スタッフが座って、みなさんとおしゃべりしているようです。そんな時は、一番気にかけてくれていたKさんが「あ!!富士子ちゃんだ!!」と笑って冗談を言うそうです。
お互いに、何かをし合っているわけでもないし、富士子さんが周りの方々に対して何かを言うわけでもなかったのですが、自然とできたこのコミュニティの中で、温かい絆が生まれていたのですね。感情表現も上手くできず、目もあまり合うことはない、おしゃべりも全くできなかった富士子さんですが、その存在は偉大です。早く帰って来てね!!みんなで待ってます・・・。